本活動報告には課題図書の結末について触れる箇所がありますので、未読の方はご注意ください。
今回の課題図書はフローベール『ボヴァリー夫人』でした。
今回は、特に2つの点、19世紀フランスで女性が自由を貫こうとした結果について、そしてシャルルの愛情と生き方について多くの意見が出ました。読書会参加者ひとりひとりがエンマに対して思うところは異なり、「不気味」「可哀そう」「嫌いではない」といろいろでした。しかしなぜ彼女だけが自殺を選ばされたのかをみたとき、ひとりのキャラクターを超え、連綿と続く男女の非対称性について考えずにはいられません。また、3人のボヴァリー夫人たちとのかかわりの中で生き死んだシャルルの一代記として読むと、また違った感興がありました。読み始めてすぐに没入できるタイプの小説ではないかもしれませんが、さまざまな読み方ができる豊かな古典として楽しむことができました。
参加者の方のコメントの一部を以下に。
- 作品全体について
- 自由間接話法による「視点の移動」がおもしろかった。
- 読み方のガイドが設定されていない小説。
- いつの時代も変わらない人間の駄目さが描かれている。
- 料理、エンマの髪型、衣装など、ディテールが詳しく興味深い。
- エンマとシャルルの性が逆だったら悲劇は起きなさそう。
- 共進会の、退屈な演説と二人の距離が縮まる会話のシーンが良い。
- 新潮文庫版の後ろ向きの女性の表紙が良かった。エンマだけではなく退屈した女達を表しているよう。
- エンマについて
- 常に讃美者が欲しい人。
- 満たされないからと不倫を繰り返す理由がわからなかった。
- 自由を貫いて死ななかったらそれは男であり、だからエンマは死んだ。
- エンマを男性的とみなすのは、奔放なエンマを女として受容できない男性の見方なのでは。
- エンマが死ぬのは女性に対する警告では。
- 職業を持たないから選択肢がなかった。
- シャルルについて
- 特徴を感じられない人物。
- エンマに異常に寛大で、情けないかもしれないが悲しい。
- 無意識のうちにエンマの行動に見てみぬふりをし続けた。
- ある意味エンマをネグレクトしていた。
- 家族の女性に翻弄され続ける男。
参加者の今回のおすすめ・話題になった本や映画はこちら。
次回の課題図書はリュドミラ・ウリツカヤ『緑の天幕』、5月28日(土)15:30からの開催です。申し込みについては、こちらのブログで別途ご案内します。
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