ちいさな読書部第34回『老人と海』開催のお知らせ


日時:6月1日(土)15:30-17:30

場所:オンライン

かつて読んだ人も、初めて読む人も。いま、歴史的名作を「新解釈」で!

老漁師サンティアーゴには、もう84日間も釣果がなかった。幼い頃から老人の見習いをしていたマノーリンは、一人前の漁師となったいまも老人を慕い、生活を気づかう。老人はそんなマノーリンをたのもしく思いながら、まだ自身のプライドも捨ててはいなかった。

翌朝、ひとりで漁に出た老人の釣縄に、巨大なカジキがかかる。そこから、老人とカジキの命を賭けた闘いが始まった。不眠不休の極限を超える死闘のなかで、老人は次第にカジキへの畏敬の念と、強い絆を感じるようになっていく。やがて運命の瞬間が訪れ、満身創痍となった老人に、しかし海は、さらなる試練を課すのだった――。

簡潔な文体と研ぎ澄まされた表現で、大いなる自然と自らの人生に対峙する男の姿を力強く描きだす、ヘミングウェイの最高傑作。(株式会社KADOKAWAの課題図書紹介ページより)

ちいさな読書部第34回は、 アーネスト・ヘミングウェイの『老人と海』を読む回です。本作は1953年にピューリッツァー賞を、そして作者も1954年にはノーベル文学賞を受賞しています。世界文学の名作として名高いこの中編小説は、学生時代に読んだことがあるという方も多いのではないでしょうか。今回取り上げる越前敏弥訳では、老人の相棒マノーリンを少年ではなく若者と解釈しているそうです。この新訳版をきっかけに、読書部の皆さんとともに(久しぶりに)ヘミングウェイを読んでみようと思います。

お申し込みはPeatixのこちらのページで受け付けています。

お願い:主催者を含め定員8名の小さな会です。運営に響きますので、確実にご参加いただけることがおわかりになってからのお申し込みをお願いいたします。直前でもたいていは空席がありますので、仮押さえ目的での申し込みはご遠慮ください。

ちいさな読書部第33回『少女、女、ほか』開催のお知らせ

 

日時:3月30日(土)15:30-17:30

場所:オンライン

大切なのは共にいること。人生、捨てたもんじゃない。笑って泣かせ心揺さぶる真実の物語。

今日はアマの演劇がナショナル・シアターで上演される初日。黒人として女性として日々受ける差別に立ち向かってきたアマが、50代になってついに栄光をつかんだのだ。記念すべき今宵、家族や友人たちが集う。演劇界を共に生き抜いてきた戦友、母の希望とは異なるがしっかりした自分の意見を持つ娘をはじめ、不遇をかこつ者、努力して社会的成功を手にしたエリートなど、時代も背景も多様な12人のキャラクターが、人生を振り返っていく。(白水社の課題図書紹介ページより)

ちいさな読書部第33回は、 バーナディン・エヴァリストの『少女、女、ほか』を読む回です。前回の『回想のブライズヘッド』は、戦間期から第二次世界大戦の時期の英国を舞台にした、贅を尽くした邸宅とその住人達の人生の崩壊を暗示する悲劇でした。今回はそのおおよそ百年後の現在、同じ英国で生きる黒人女性たちの人生を描いた小説を読んでみたいと思います。

本作は、ちいさな読書部でも取り上げたアトウッド『誓願』と共に、2019年度のブッカー賞を受賞しています。受賞は一作という規則を破った異例のダブル受賞で、エヴァリストは黒人として初の受賞者となりました。『誓願』に勝るとも劣らない評価を得た本作を、キャシー・アッカーやジム・クレイスの作品を翻訳してきた渡辺佐智江さんの日本語で読める幸せを、読書部メンバーと分かち合えるのを楽しみにしています。

お申し込みはPeatixのこちらのページで受け付けています。

お願い:主催者を含め定員8名の小さな会です。運営に響きますので、確実にご参加いただけることがおわかりになってからのお申し込みをお願いいたします。直前でもたいていは空席がありますので、仮押さえ目的での申し込みはご遠慮ください。

ちいさな読書部第32回『回想のブライズヘッド』開催のお知らせ

日時:1月27日(土)15:30-17:30

場所:オンライン

豪壮な邸宅が聳える侯爵家の所領ブライズヘッド。その邸の次男で学生時代の友をめぐる、華麗で苦悩に満ちた青春の回想。

第2次大戦中、物語の語り手ライダーはブライズヘッドという広大な邸宅の敷地に駐屯する。「ここは前に来たことがある」。この侯爵邸の次男でライダーの大学時代の友セバスチアンをめぐる、華麗で、しかし精神的苦悩に満ちた青春の回想のドラマが始まる。20世紀イギリスの作家ウォー(1903-66)の代表作。(岩波書店の課題図書紹介ページより)

ちいさな読書部第32回は、 イーヴリン・ウォーの『回想のブライズヘッド』を読む回です。お正月休みにじっくり小説を楽しむことをテーマに、本読書会では毎年1月に複数巻の長めの小説を読むのが恒例になっています。ニューズウィーク誌により世界文学ベスト100の1冊に挙げられた本書で、お正月休みを過ごしてみませんか。本書を原作とする映画『情愛と友情』も、現在Amazon Prime Videoで視聴できるようです。

管理人は岩波文庫の小野寺健訳で読むつもりです。お好みの版でご参加ください。

お申し込みはPeatixのこちらのページで受け付けています。

お願い:主催者を含め定員8名の小さな会です。運営に響きますので、確実にご参加いただけることがおわかりになってからのお申し込みをお願いいたします。直前でもたいていは空席がありますので、仮押さえ目的での申し込みはご遠慮ください。

ちいさな読書部第31回『知と愛』活動報告

本活動報告には課題図書の結末について触れる箇所がありますので、未読の方はご注意ください。

今回の課題図書はヘルマン・ヘッセ『知と愛』でした。

今回は、「好き」派と「わからない」派で分かれる会になりました。ゴルトムントの女性遍歴やストーリー展開にリアリティを感じず、乗り切れずに読んだ方も、二人の友情、自然描写や、読後感の美しさを味わって読んだ方もいたからです。みなさんの意見を聞いて納得したり新しい視点を得たりするなかで管理人が思ったのは、本書は「人はその才を生かす場所に身を置くべき」というヘッセの思いが小説の形をとったものであり、その信念のために唯一愛する者の背中を押す友情のうつくしさの表れであるということでした。

話題の一部を以下に。

  • 行って帰ってくる構成になっており、最初と最後はナルチスとゴルトムントの対話により状況が整理される。気持ちよく読めた。
  • 女性が人間扱いされない、人としての描写がない。
  • ホモソーシャルな小説ではあると感じた。
  • ゴルトムントは放浪はしたものの、生き生きとしており、もがいているというより自分の欲望を理解していた。他者に対していつも前向きなので許されている。
  • ゴルトムントが美の理解者になるための試練として、清濁を併せ飲む放浪の旅が必要だったのでは。
  • ゴルトムントとナルチスは本来一人の人間なのではないか。
  • ゴルトムントはナルチスに「母がなくてどうやって死ねるだろう」と言い置いて亡くなった。そこからナルチスの中に新しい何かが生まれる予感を残して終わっている。
  • ゴルトムントへの母への執着がわかる/わからない(これは男性と女性でかなり納得感が違うポイントでした)。

参加者の今回のおすすめ・話題になった本はこちら。

次回の課題図書はイーヴリン・ウォー『回想のブライズヘッド』、1月27日(土)15:30からの開催です。申し込みについては、こちらのブログで別途ご案内します。


ちいさな読書部第31回『知と愛』開催のお知らせ

日時:11月25日(土)15:30-17:30

場所:オンライン

"彼はこのきれいな明るい愛らしい少年を友だちにしたいと願った。この少年が自分の反対の極であると同時に、自分の補足であることを、ほのかに感じた。"

精神の人になろうとして修道院に入ったゴルトムントは、そこで出会った若い師ナルチスによって、自分は精神よりもむしろ芸術に奉仕すべき人間であることを教えられ、知を断念して愛に生きようと、愛欲と放浪の生活に入る。人間のもっとも根源的な欲求である知と愛とが、反撥しあいながら互いに慕いあう姿を描いた、多彩な恋愛変奏曲ともいうべき作品である。(新潮社の課題図書紹介ページより)

ちいさな読書部第31回は、ヘルマン・ヘッセの『知と愛』を読む回です。社会派小説を扱った前回とは方向性をがらりと変えて、知性と感性をめぐって放浪する精神を追いかけてみたいと思います。

管理人は新潮文庫の高橋健二訳で読むつもりです。お好みの版でご参加ください。

お申し込みはPeatixのこちらのページで受け付けています。

お願い:会の運営に響きますので、確実にご参加いただけることがおわかりになってからのお申し込みをお願いいたします。直前でもたいていは空席がありますので、仮押さえ目的での申し込みはご遠慮ください。

ちいさな読書部第30回『こびとが打ち上げた小さなボール』活動報告

本活動報告には課題図書の結末について触れる箇所がありますので、未読の方はご注意ください。

今回の課題図書はチョ・セヒ『こびとが打ち上げた小さなボール』でした。

本書は、韓国で300刷を超えるロングセラーの、正面から格差や差別を扱った作品です。そのストレートな文体に影響されたのでしょうか、なぜ本書が読まれてきたのか、自分はどのように読んだのかについて、率直な感想や意見が交わされる会になりました。本書では「こびと」から財閥のトップの息子まで、さまざまな状況の人たちがそれぞれの立場で必死に生きています。各短編から立ち上がってくる複数の声を聞き取ることで、各々の置かれた立場から世代を超えて––たとえ個々人が失敗したとしても––社会の歪みを自分のこととして正そうとする行動が、少しずつより良い未来を造っていく、そうでなくてはならない、という著者の願いが伝わってきたように思います。

話題の一部を以下に。

  • 読書会メンバーが感情移入した登場人物について。特定の人物に集中せず、さまざまなキャラクターが感情移入の対象になっていました。異なる立場の読み手が共感できるように書かれているからこそ、読み継がれてきたのかもしれません。
  • 登場人物たちの心理について。悲惨な状況にある貧困層と、彼らを利用しようとする富裕層のどちらにも、素直で優しい面を持った人たちがいました。それがテーマの過酷さにもかかわらず、本書が美しさや透明感を感じさせる理由なのではないかという意見がありました。
  • 上記の意見に関連して、本書が社会問題を提起し、広く読まれることを意図しており、人物造形が単純化されていること、したがって、純文学としては弱点があるように感じた方がいらっしゃいました。その一方で、暗いだけではない美しさを感じたという方もおり、本書におけるリアリティのバランスの受け取り方が、読み手によって異なっていたことがわかりました。
  • 小人の家族がときおり口にする「小人だから」というフレーズに、具体的に説明できないドロドロした感情が込められているのではないかという指摘がありました。小人の家族の中でも、このフレーズを使う人物と使わない人物がおり、スティグマの度合いが異なることが暗示されていました。
  • 韓国は80年代に民主化を成功させています。かつてもがいて絶望しながらも、ヨンスのように後世の礎になった人たちが存在したこと、彼らは自分がやったことに何も意味を見いだせなかったかもしれないが、さまざまな運動がつながってよい変化がもたらされたことに感動した、というご意見がありました。著者は本書が二百刷を超えたとき、読まれ続けていることを「恥ずべき記録」と述べたそうです。しかし時を経て読まれ方が多様化し、2020年代の読者には勇気を与える作品にもなったといえそうです。

今回話題になった本については、申し訳ありません、管理人の不手際でデータが消えてしまったため、省略させていただきます。

次回の課題図書はヘルマン・ヘッセ『知と愛』、11月25日(土)15:30からの開催です。申し込みについては、こちらのブログで別途ご案内します。

ちいさな読書部第30回『こびとが打ち上げた小さなボール』開催のお知らせ

日時:9月30日(土)15:30-17:30

場所:オンライン

韓国で300刷を超えるロングセラーにして、現代の作家たちから多大なリスペクトを受ける名作。急速な都市開発をめぐり、極限まで虐げられた者たちの、千年の怒りが渦巻く祈りの物語。(河出書房新社の課題図書紹介ページより)

一九七〇年代後半に書かれた本作を、過去の作品と呼んでよいのかどうか。確かに、扱われているのは軍政時代の韓国社会の暗部である。にもかかわらず、今の日本に生きづらさを感じる人が読むと、恐ろしいほどリアルに感じるだろう。(オール・レビューズ. 星野智幸 「負の連鎖を断ち切るための祈り」. (参照 2023/07/30))

ちいさな読書部第30回は、チョ・セヒの『こびとが打ち上げた小さなボール』を読む回です。七〇年代に出版された怒りと祈りの物語が現在まで読み継がれている理由を、文庫化を機に、読書部のみなさんとともに探ってみたいと思います。

お申し込みはPeatixのこちらのページで受け付けています。

お願い:会の運営に響きますので、確実にご参加いただけることがおわかりになってからのお申し込みをお願いいたします。直前でもたいていは空席がありますので、仮押さえ目的での申し込みはご遠慮ください。

ちいさな読書部第29回『ハドリアヌス帝の回想』活動報告

本活動報告には課題図書の結末について触れる箇所がありますので、未読の方はご注意ください。

今回の課題図書はマグリット・ユルスナール『ハドリアヌス帝の回想』でした。

一文一文が長く、けして読みやすい小説ではありません。しかし読み通してみれば、古代ローマの偉人の視点から世界を見て皇帝としての生涯を体験できる、ほかに並ぶもののない小説であると感じました。読書会では、ハドリアヌス帝のリーダーシップや恋愛、政治観の現代性、硬質な文体などがとくに話題に上りました。皇帝の統治方法や広域通信のしくみなど、古代ローマについてもっと知りたくなる本でもありました。

参加者の方のコメントの一部を以下に。

  • 文体と構成:
    • 文章が濃密で上品。何度でも読み返したい。
    • 主要な登場人物は少ないが、それぞれとの関係にユニークさがある。
    • 劇的な表現はなく抑制された声で語られているが、困難に遭ったときのハドリアヌス帝の困惑や動揺が明確に伝わってくる。
    • 俯瞰的に広大なローマ帝国を描く歴史小説でもあった。
    • 作者がハドリアヌス帝になりきって、史実と創作の切れ目を感じさせないように語っている。
  • ハドリアヌス帝の仕事ぶり:
    • 君主論として興味深く読んだ。
    • ハドリアヌス帝の統治、法整備、仕事論に、今の時代にも通じる要素があると感じた。
    • ハドリアヌス帝の理想世界に、本書が執筆された20世紀の考え方が入っているように感じた。
    • 古代ローマの時代から人間はあまり進歩していないのかも。
  • アンティノウスとハドリアヌス帝の関係:
    • ハドリアヌス帝に権力がありすぎる。恋愛関係が成り立たないのでは?
    • アンティノウスにとっては愛人役という仕事だったのではないか。
    • 美を愛するハドリアヌス帝にとって、美しいアンティノウスは特別な存在だった。
    • アンティノウスの死の悼みかたに、ハドリアヌス帝の視野の広さや多文化を吸収する能力が表れていた。

参加者の今回のおすすめ・話題になった本はこちら。

次回の課題図書はチョ・セヒ『こびとが打ち上げた小さなボール』、9月30日(土)15:30からの開催です。申し込みについては、こちらのブログで別途ご案内します。

ちいさな読書部第34回『老人と海』開催のお知らせ

日時:6月1日(土)15:30-17:30 場所:オンライン かつて読んだ人も、初めて読む人も。いま、歴史的名作を「新解釈」で! 老漁師サンティアーゴには、もう84日間も釣果がなかった。幼い頃から老人の見習いをしていたマノーリンは、一人前の漁師となったいまも老人を慕い、生活を気づ...