ちいさな読書部第29回『ハドリアヌス帝の回想』開催のお知らせ

日時:7月29日(土)15:30-17:30

場所:オンライン

旅とギリシア、芸術と美少年を偏愛したローマ五賢帝の一人ハドリアヌス。命の終焉でその稀有な生涯が内側から生きて語られる、「ひとつの夢による肖像」。著者円熟期の最高傑作。(白水社の課題図書紹介ページより)

マグリット・ユルスナールは、一九五一年に発表したこの『ハドリアヌス帝の回想』によって、フランス国内のみならずひろく諸外国の評家の絶賛を博した。これは戦前から頭角を現していた才能のいわば《登極》であって、帝王を扱ったこのまさに王者的著作によって彼女は五二年度のフェミナ賞を受け、たちあち諸外国に翻訳されてイギリス、アメリカでも夙にベストセラーになった。(多田智満子「解題=訳者あとがき」)

ちいさな読書部第29回は、マグリット・ユルスナールの『ハドリアヌス帝の回想』を読む回です。詩人でもあった多田智満子の翻訳による、美しい歴史/心理小説を楽しみたいと思います。

お申し込みはPeatixのこちらのページで受け付けています。

お願い:会の運営に響きますので、確実にご参加いただけることがおわかりになってからのお申し込みをお願いいたします。直前でもたいていは空席がありますので、仮押さえ目的での申し込みはご遠慮ください。

ちいさな読書部第28回『芽むしり仔撃ち』活動報告

本活動報告には課題図書の結末について触れる箇所がありますので、未読の方はご注意ください。

今回の課題図書は大江健三郎『芽むしり仔撃ち』でした。

緻密で整った構成、生命力に溢れた少年たちの活き活きとした描写、権力・差別・自由をめぐる問いと、250ページに満たないながらとても濃い作品でした。主人公の孤独な抵抗は最終的に失敗します。閉塞感に満ちた結末は苦しいものでしたが、悲劇の美しさも感じました。主人公の結末については、人によってばらばらな読み方になって驚きました。毎回のことですが、違う読み方をした人と感想を交換するのは心躍る体験です。

参加者の方のコメントの一部を以下に。

  • 1ページ目から伏線が張られている。緻密。
  • 外国人、女性、脱走者を使って差別の構造が語られている。
  • どこに行っても人間は囚われている。
  • 村人-僕ら、僕-弟、僕-南など、多くの対比があり、ときに被抑圧者が抑圧者になることが巧みに描かれている。
  • 人物の身体描写が鮮やか。
  • 結末は韓国のノワール映画のよう(参照:「狩りの時間」)。
  • 子供だけの自治、感化院の少年たちの人数など、ゴールディング『蠅の王』(1954年出版)を意識していたのでは?(本作品は1958年出版)
  • 村人の非情さは、集団の安定のため。同じ非情さを主人公も持っている。
  • ルールに従う村人たちと、自分で考え抵抗する脱走兵の対比。
  • 権力に対抗する弱者の正義が描かれている。

参加者の今回のおすすめ・話題になった本はこちら。

次回の課題図書はマルグリット・ユルスナール『ハドリアヌス帝の回想』、7月29日(土)15:30からの開催です。申し込みについては、こちらのブログで別途ご案内します。

ちいさな読書部第34回『老人と海』開催のお知らせ

日時:6月1日(土)15:30-17:30 場所:オンライン かつて読んだ人も、初めて読む人も。いま、歴史的名作を「新解釈」で! 老漁師サンティアーゴには、もう84日間も釣果がなかった。幼い頃から老人の見習いをしていたマノーリンは、一人前の漁師となったいまも老人を慕い、生活を気づ...