ちいさな読書部第11回『イザベルに: ある曼荼羅』開催のお知らせ


日時:7月25日(土)15:30-17:30
場所:オンライン

ポルトガルの独裁政権下で地下活動に関わり姿を消した女性イザベルをめぐる物語。リスボン、マカオ、スイスと舞台を移しつつ9人の証言者によって紡がれる謎の曼荼羅。

『インド夜想曲』『遠い水平線』の著者が遺した最後のミステリ

姿を消したひとりの女性の軌跡を辿りながら、語り部の現実と幻想の糸で織りなされる彩り豊かな曼荼羅の中を、私たちは旅をする。——ヤマザキマリ(漫画家)(河出書房新社の課題図書紹介ページより)


ちいさな読書部第11回は、アントニオ・タブッキ『イザベルに: ある曼荼羅』を読む会です。

タブッキ[1943-2012]は、現代イタリアを代表する作家です。「タブッキの小説は、虚構と現実が交錯する作品が多く、一見、時間の秩序を無視しているかにみえ」ますが、彼にとっては「小説において虚構を構築するという行為自体が、「時間」や「記憶」の探求という主題に向き合うこと」でした。(表彰文化論学会ニュースレター REPRE 30号 和田忠彦「タブッキをめぐる九つの断章」紹介ページより)

タブッキと言えば『レクイエム』を代表作として思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。7月の暑い午後にリスボンの街をさまよう男の物語を読み返すには、次回の読書会はちょうど良いタイミングなのですが、少々ひねって『レクイエム』の姉妹編といわれる『イザベルに: ある曼荼羅』を課題図書にしました。ミステリ仕立てなタブッキ最後の作品を、ゆっくり味わいたいと思います。

本会はZoomを使ってオンラインで実施します。接続方法についてはこちらを、Zoomの使い方についてはこちらをご覧ください。初めてセットアップする場合のテスト方法はこちら

過去のオンライン読書会でわかったのですが、3人に1人ほどの割合で、お使いのデバイスの内蔵マイクが音声をうまく拾ってくれないようです。オンラインミーティングが初めてという方は、ヘッドセットやマイク付きイヤフォンのご利用をお勧めします。有線の製品なら1000円程度から入手できます。

ちいさな読書部第10回『グレート・ギャッツビー』活動報告

本活動報告には課題図書の結末について触れる箇所がありますので、未読の方はご注意ください。

今回の課題図書はF・スコット・フィッツジェラルド『グレート・ギャッツビー』でした。


古典の名作とされる本作ですが、予想以上に読書会向きの小説でした。ギャッツビーの純粋さに感動する人もいれば、その純粋さをナイーブ過ぎると感じる人もいて、読み手によって注目点が分かれました。それと同時に、いわゆる“男のロマン”小説として以外の読み方にも耐えるところは、本作のすぐれた点のひとつといえるでしょう。壮大な敗北、夫婦の危機と回復、富裕層対貧困層、東部対西部、虚栄と倫理など、話題の切り口は多岐にわたりました。

たとえば、判断を保留する男であるニックは、ギャッツビーとかかわったことで––あの夏から長い時間が経ってからではあるのですが––変わらざるをえなかったのではないか、だからこそニックには本来知りえない、マートルの死後のジョージ・ウィルソンのふるまいも含めて、ニックにとっての真実を『グレート・ギャッツビー』として語り直したのではないかという話になりました。本作の中で鍵になる出来事は何もしないニックですが、彼が持つ「判断保留/(ジョーダンが非難する)不正直」の属性が本作の構成の基礎をなしていたことに気づいてみると、この小説がより奥行きを持って立ち上がってきます。ひとりでは気づけない視点を共有できました。参加者の皆さんありがとうございました。

参加者の方のコメントの一部を以下に。
  • 村上春樹『騎士団長殺し』にギャッツビーそのままのような人物が出てくる。
  • ニックの良さも悪さも村上春樹の小説の登場人物に似ている。
  • デイジーがギャッツビーのパーティに来て言う「緑のカード」とは何か?(これは読書会中には答えが見つからなかったのですが、この活動報告をご覧になった方から情報が寄せられました。女性がパーティーの際にダンスの相手に前もって渡しておく、「ダンスカード」なるものがあったそうです!)
  • デイジーは意図的に小さな声で話すことで相手をコントロールしている、そういう人は実際にもいる。
  • ニックが図書室で出会った「ふくろう眼鏡の男」はどのような存在だったのか、彼だけが葬式に参列した。
  • 「ふくろう眼鏡の男」と「エクルバーグ博士の目」のイメージが重なる、誰かがかならず見ているということなのか。
  • 本筋よりギャッツビーのパーティのゲストの描写が興味深かった。
  • デイジーはトムに事故の真相を話したのでは? だからこそ慌ただしく旅立ったのでは。
  • ブキャナン夫妻にとっては「雨降って地固まる」事件だったと思う。

参加者の方の今回のおすすめ本・話題になった本はこちら。


第11回の課題図書はアントニオ・タブッキ『イザベルに: ある曼荼羅』、7月25日(土)15:30からの開催です。申し込みについては、こちらのブログで別途ご案内します。


ちいさな読書部第34回『老人と海』開催のお知らせ

日時:6月1日(土)15:30-17:30 場所:オンライン かつて読んだ人も、初めて読む人も。いま、歴史的名作を「新解釈」で! 老漁師サンティアーゴには、もう84日間も釣果がなかった。幼い頃から老人の見習いをしていたマノーリンは、一人前の漁師となったいまも老人を慕い、生活を気づ...