本活動報告には課題図書の結末について触れる箇所がありますので、未読の方はご注意ください。
今回の課題図書はF・スコット・フィッツジェラルド『グレート・ギャッツビー』でした。
古典の名作とされる本作ですが、予想以上に読書会向きの小説でした。ギャッツビーの純粋さに感動する人もいれば、その純粋さをナイーブ過ぎると感じる人もいて、読み手によって注目点が分かれました。それと同時に、いわゆる“男のロマン”小説として以外の読み方にも耐えるところは、本作のすぐれた点のひとつといえるでしょう。壮大な敗北、夫婦の危機と回復、富裕層対貧困層、東部対西部、虚栄と倫理など、話題の切り口は多岐にわたりました。
たとえば、判断を保留する男であるニックは、ギャッツビーとかかわったことで––あの夏から長い時間が経ってからではあるのですが––変わらざるをえなかったのではないか、だからこそニックには本来知りえない、マートルの死後のジョージ・ウィルソンのふるまいも含めて、ニックにとっての真実を『グレート・ギャッツビー』として語り直したのではないかという話になりました。本作の中で鍵になる出来事は何もしないニックですが、彼が持つ「判断保留/(ジョーダンが非難する)不正直」の属性が本作の構成の基礎をなしていたことに気づいてみると、この小説がより奥行きを持って立ち上がってきます。ひとりでは気づけない視点を共有できました。参加者の皆さんありがとうございました。
参加者の方のコメントの一部を以下に。
- 村上春樹『騎士団長殺し』にギャッツビーそのままのような人物が出てくる。
- ニックの良さも悪さも村上春樹の小説の登場人物に似ている。
- デイジーがギャッツビーのパーティに来て言う「緑のカード」とは何か?(これは読書会中には答えが見つからなかったのですが、この活動報告をご覧になった方から情報が寄せられました。女性がパーティーの際にダンスの相手に前もって渡しておく、「ダンスカード」なるものがあったそうです!)
- デイジーは意図的に小さな声で話すことで相手をコントロールしている、そういう人は実際にもいる。
- ニックが図書室で出会った「ふくろう眼鏡の男」はどのような存在だったのか、彼だけが葬式に参列した。
- 「ふくろう眼鏡の男」と「エクルバーグ博士の目」のイメージが重なる、誰かがかならず見ているということなのか。
- 本筋よりギャッツビーのパーティのゲストの描写が興味深かった。
- デイジーはトムに事故の真相を話したのでは? だからこそ慌ただしく旅立ったのでは。
- ブキャナン夫妻にとっては「雨降って地固まる」事件だったと思う。
参加者の方の今回のおすすめ本・話題になった本はこちら。
第11回の課題図書はアントニオ・タブッキ『イザベルに: ある曼荼羅』、7月25日(土)15:30からの開催です。申し込みについては、こちらのブログで別途ご案内します。
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