本活動報告には課題図書の結末について触れる箇所がありますので、未読の方はご注意ください。
今回の課題図書は大江健三郎『芽むしり仔撃ち』でした。
緻密で整った構成、生命力に溢れた少年たちの活き活きとした描写、権力・差別・自由をめぐる問いと、250ページに満たないながらとても濃い作品でした。主人公の孤独な抵抗は最終的に失敗します。閉塞感に満ちた結末は苦しいものでしたが、悲劇の美しさも感じました。主人公の結末については、人によってばらばらな読み方になって驚きました。毎回のことですが、違う読み方をした人と感想を交換するのは心躍る体験です。
参加者の方のコメントの一部を以下に。
- 1ページ目から伏線が張られている。緻密。
- 外国人、女性、脱走者を使って差別の構造が語られている。
- どこに行っても人間は囚われている。
- 村人-僕ら、僕-弟、僕-南など、多くの対比があり、ときに被抑圧者が抑圧者になることが巧みに描かれている。
- 人物の身体描写が鮮やか。
- 結末は韓国のノワール映画のよう(参照:「狩りの時間」)。
- 子供だけの自治、感化院の少年たちの人数など、ゴールディング『蠅の王』(1954年出版)を意識していたのでは?(本作品は1958年出版)
- 村人の非情さは、集団の安定のため。同じ非情さを主人公も持っている。
- ルールに従う村人たちと、自分で考え抵抗する脱走兵の対比。
- 権力に対抗する弱者の正義が描かれている。
参加者の今回のおすすめ・話題になった本はこちら。
次回の課題図書はマルグリット・ユルスナール『ハドリアヌス帝の回想』、7月29日(土)15:30からの開催です。申し込みについては、こちらのブログで別途ご案内します。
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