本活動報告には課題図書の結末について触れる箇所がありますので、未読の方はご注意ください。
今回の課題図書はモーム『人間のしがらみ』でした。
フィリップとミルドレッドの関係について、参加者が理解できる派と理解できない派でおおよそ半々になったので、予想外に盛り上がる会になりました。管理人はミルドレッドという強力な登場人物に気を取られて作品の構造がいまひとつ掴み切れていなかったのですが、参加者の方々のお話をうかがう中で、フィリップの成長の過程に気づけたのが大きな収穫でした。自立した職業人として自信をつけたフィリップが家庭的なサリーと結ばれるところで、この小説は終わります。その後の彼が別の陥穽に落ちないとも限りませんが、まずは孤独から脱し自分のホームを持てたことに安心して、本を閉じることができました。
参加者の方のコメントの一部を以下に。
- 全体について
- 九割共感できなかったので、読書会でわからなさを共有したい。
- つれなくされた側が追いかけ、最後には男性が若い女性と落ち着くのが男女関係の典型だと思った。
- モームの、登場人物の外見描写が細やかかつ辛辣。男性が女性のどこを見ているのかがわかる。
- 親戚の若者を見守る気持ちでフィリップを見守ってしまった。
- フィリップのキャラクター造形について
- コンプレックスの塊で孤独な人。
- 気持ちが昂ることを衝動的に選んでしまう。
- 簡単に人間関係を切ってしまう。プライドが高く、人を助けることはできるが助けを求めることはできない。
- 周囲の人の外見に注目し過ぎ。美を尊び過ぎ。
- 病院で見習いをしてだいぶ自信をつけた。働いて自立する経験は人間を強くする。
- フィリップとミルドレッドの関係について
- フィリップはミルドレッドを見下している。そんな相手に恋をするとは?
- (わかる派)理由はない、人生にはそういう落とし穴がある。
- (わからない派)「特別かもしれない自分」を実現する欲望があるのでは。フィリップは支配欲が強くて、目下の人間をコントロールしたいのでは。
- ミルドレッドが人を人として見ないのが恐ろしかった。
- フィリップとサリーの関係について
- サリーはミルドレッドの対極の存在。フィリップが変わったから健康的なサリーを愛するようになった。
- サリーはフィリップが一番辛いときに彼への愛を自覚した。ミルドレッドと正反対。
- フィリップはミルドレッドには恋をしたが、母性的で自制心があるノーラやサリーを「恋愛感情はない」まま愛する。フィリップにとって恋愛は苦しいものでなければならなかった。
参加者の今回のおすすめ・話題になった本や映画はこちら。
次回の課題図書はコーマック・マッカーシー『すべての美しい馬』、3月25日(土)15:30からの開催です。申し込みについては、こちらのブログで別途ご案内します。
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