本活動報告には課題図書の結末について触れる箇所がありますので、未読の方はご注意ください。
今回の課題図書はイシグロ『日の名残り』でした。
今回は、過去に本書を読んでおり、読書会のために読み返したという方が参加者の半分を占めました。若いときにはのみこめなかった老執事の葛藤や弁明が理解できるようになったり、自分事として考えてみたり。さらに10年後に読んだらまた違った感興をそそられそうです。興味深かったのは、結末が明るいものなのか苦いものなのかについて意見が分かれたところです。イギリスの国としての凋落と重ねて読めばほろ苦く感じられ、スティーブンスが囚われていた古い価値観から脱却できたと感じれば希望があります。読み手のスティーブンスに対する信頼度が決め手だったのでしょうか。
参加者の方のコメントの一部を以下に。
- 人生を振り返る心の葛藤が描かれていて、じわじわ沁みる本だった。
- 日常のエピソードを描くのが上手い。ストーリー全体のトーンとは別の可笑しさがある。
- 若いころはスティーブンスの語るとおりに受け取っていたが、今は彼の自己欺瞞がわかる。
- スティーブンスは父親が代表するような品格ある執事像を、最後に捨て去ることができたのでは。それが結末の解放感につながっている。
- スティーブンスは感情を殺して生きてきたから、ケントンが大切な人だと意識できなかったのでは。
- 性別や時代を問わず、なにかに従属したい人はいる。そういう人の価値観が崩れたときの混乱の物語だったのでは。
- イギリスの老執事の物語に、誰にも共通する普遍的な葛藤があった。
参加者の今回のおすすめ・話題になった本はこちら。
第18回の課題図書はヴァージニア・ウルフ『波』、9月25日(土)15:30からの開催です。申し込みについては、こちらのブログで別途ご案内します。
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