本活動報告には課題図書の結末について触れる箇所がありますので、未読の方はご注意ください。
今回の課題図書はカフカ『訴訟』でした。
『訴訟』は未完の作品であり、著者が章の順序を確定させていません。そのぶんはっきりした起承転結がなく、読み終わったときに宙ぶらりんの感覚に陥ったという方もいらっしゃいました。しかし、コロナ禍のために、直接分かり合う感覚を共有することが難しい今、古典に分類される『訴訟』の「自分の認識が社会/他者のそれと乖離するおそれ」というテーマは、ひときわリアリティを持って現れてきました。参加者全員が、いわゆる「カフカ的」という言葉に想起されるような不条理よりも現代社会の不安を本書に感じ、またその感じ方が各人で異なった点で、読書会向きの一冊だった気がします。
参加者の方のコメントの一部を以下に。
- 丘沢訳は読みやすかった。
- 現在のラノベ、マンガに近い感覚で読めた。世界が突然変わってしまい、その理由を説明しない点も近い。
- 誰かの夢をのぞき見している感じがした。
- 評判を落とされることへの恐怖が描かれていた。
- 会社員の悲哀が伝わってきた。
- 余命告知されたときの人間の反応に近いのではないか。
- 人間関係で失敗したときの心情の描写がうまい。
- 現代社会の置き換え可能な人間が描かれており、自分の取るに足らなさを感じてしまった。
- Kは本当に無罪なのか、彼の認識が間違っている可能性もある。
- Kのような自分に気づいた。会話のかみ合わなさにリアリティがあった。
参加者の今回のおすすめ・話題になった本はこちら。
第17回の課題図書はカズオ・イシグロ『日の名残り』、7月31日(土)15:30からの開催です。申し込みについては、こちらのブログで別途ご案内します。
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