本活動報告には課題図書の結末について触れる箇所がありますので、未読の方はご注意ください。
今回の課題図書はル・クレジオ『隔離の島』でした。
感染症に対する直接的な恐怖の描写は少ないですが、極限状態にある人間のふるまい、変質してしまう関係、生き方の大転換など、コロナ禍の身近な出来事と重なるエピソードも多い小説でした。その一方で、多くの参加者が本書のテーマとして捉えたのは、西洋と東洋、支配する側とされる側の境界を越えるという越境のテーマだったように感じます。
シュルヤの造形については意見が分かれました。理想化しすぎ、意思を持った人間に見えない、物語中の役割としてあのようであることは理解できる、レオン1にとってのシュルヤであり実際にどうだったのかはわからない、などなど。管理人としてはシュルヤにとってのレオン1、リリにとってのレオン2は何者だったのか、ル・クレジオが書こうとしたらどのようなものになったのかが気になりました。
参加者の方のコメントの一部を以下に。
- 隔離されたときのジョンとヴェランのふるまいの対比が興味深かった。ルーチンがある人は強い。
- 「隔離」の章のあとのサラが気になる。回復していてほしい。
- レオン1のありように西洋的支配に対する後ろめたさを感じた。
- 動植物、島の光景の描写が幻想的。
- シュザンヌにシュルヤとは違う魅力があった。ル・クレジオは女性を理想化する書き手なのか。
- 日本からの移民や沖縄と本土の関係について改めて思うところがあった。
- ジュディス・バトラーの植民地主義とジェンダーの相似を思い浮かべた。
- サイードの『オリエンタリズム』とシュルヤが重なる。
- 船から島に天然痘が持ち込まれたた点で、ヨーロッパから南米に風邪と梅毒が持ち込まれたのを連想した。
- レオン1がジャックと決別するのは、兄が西洋を体現しているから。
参加者の今回のおすすめ本・話題になった本はこちら。
第14回の課題図書はブロンテ『嵐が丘』、1月30日(土)15:30からの開催です。申し込みについては、こちらのブログで別途ご案内します。
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