今回の課題図書はボフミル・フラバル『わたしは英国王に給仕した』でした。
なぜこのタイトルなのか?」「ジーチェはどういうつもりで『わたしはエチオピア皇帝に給仕しましたから』を決まり文句にしていたのか?」「このフレーズは物語の中のチェコ人たちにどのように響いたのか?」と答えの出ない多くの疑問が挙げられ、参加者それぞれの解釈を共有する会になりました。
本書では、食事、衣装、調度、女性の美に対する眩しい気持ちが平易な口調で語られるため、楽しい物語を読み進める快さがあります。その一方で、主人公の、いくら努力しても最終的には集団から排除される成り行き、時代に翻弄され、なるべく有利な立場に自らを置こうと立ち回る小市民性に、辛い気持ちになったり苛立ちを感じたり。主人公の自伝という形式である以上、彼があえて書かなかったことがあるはずです。書かれなかった理由を考えながら読む中で、物語の結末を肯定的にとらえるか否かについて読書会参加者の意見が分かれた点が、管理人としては面白く感じました。
参加者の方のご感想の一部を以下に。
- ジェットコースターのようで、想像力が求められる本。急展開で前のページに戻るはめに何度も陥った
- タイトルについて1:「英国王に給仕できなかった自分」を皮肉な目で見ている
- タイトルについて2:「英国王に給仕した」師匠に対する敬愛では
- 決まり文句について:元は自慢だったが、自分の人生の単なる一エピソードにまで変化したのでは
- 魅力がない語り手の魅力的な語り
- 自分語り小説で整理されていない(著者はあえてそうしたようですね)
- 主人公は他者に興味がなく、自分は特別だという感じている
- 釘打ち息子や牛と城など、ガルシア=マルケスのよう
ちいさな独裁者
参加者の方の推薦本はこちら。
シリーズ ケアをひらく
第5回の課題図書はウラジーミル・ナボコフ『カメラ・オブスクーラ』、7月27日(土)15:30からの開催です。申し込みについては、こちらのブログで別途ご案内します。
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